家がだいぶ朽ちてきて
塗装をしなければならなくなった。
それと同時にインフルエンザで寝込むことにもなってしまった。
足場を組む際の、金属音の中
高熱にうなされ寝込んでいたら依然見学した、屠畜場が思い出された。
牛を鎖で繋ぎ、自動追い込み機で繋留所に移動させる際に鎖とドア棒がかち合う音が、足場を組む金属音と似ていたからだ。
力ずくの、冷たく強靭な金属の音は恐ろしい。
人間にしか出せない怖い音だ。
私は風邪をひいているけど明日も生きている可能性がある。
だけどあの時牛は、死を察して抗ったけれど、ゆるやかに動く自動追い込み機に逆らえず間もなく屠畜される場所へと送られていった。
最期にあの金属音を聞きながら強制的に迎える死がいかほどまでに恐ろしいか、
自分の手を汚さず、命を引き継ぐことに思いを馳せれば、
その命に感謝をせずにはいられない。
感謝して優しい音を 奏でて生きたい。